教師と一緒に酒をのんで語りあうという旧制の風潮ものこっていたが、四期生の修学旅行後、本校での酒煙草は完全になくなって、その後長く続いた。 修学旅行で酒煙草をのんだことに対して女子を中心にして大討論がもたれた末の決定であった。

 創立当時はみな貧しくて教科書代を払えない生徒もいた。教室内で教科書を配って金を集めたが、お金のない子には身銭を切って本を与えた。しかし一方「先生おつりはいりません」という江戸っ子ばりの生徒もいて二、三人分の本代がういたことを覚えている。 それが新制中学から来た生徒になったとき、一円でも「先生おつり」といわれて、それが当たり前であるのに急に生徒気質が代わって来たのを感じた。街には進駐軍があふれ、子どもたちはチョコレートやガムをせがんで兵隊をおいかけ、進駐軍物資が各家庭にくばられ、闇市が氾濫したまことに無秩序で卑屈な占領下時代ではあったが、平和をとりもどした学園の中での生徒たちは、学ぶこととクラブ活動はおろそかに考えてはいなかった。

 同窓会で当時の生徒であうと、落ち着いた豊かな人間性をもった有能な社会人になっていて、その心の暖かさが私の心に浸みわたって来るのを感じる。人間信頼の時代であった。貧しかったけれども、心の豊かな時代だったなと思うのである。

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