Homeコラム創立25周年記念誌遥かなりわが青春(1)

遥かなりわが青春

二期 松本 朱実    

 昭和二十七年三月、私は都大附属を巣立ちました。学制改革によって義務教育年数が、六年から九年に延長される二年前に、私は旧制の女学校に入学しました。 疎開先の長野から父母のいる投稿の女学校へ転向してきた当時は、まだ物資のない頃で、母の着物を直した上着とモンペ、靴はヤミ市で買った運動靴でした。 その頃仮住まいが柿の木坂で、現在のように目黒通りが真直ぐではなく、変形のコの字形に曲がっていて、現在のトリツセンターの附近は、古着や食べものやなどの雑多により集まった「マーケット」でした。 旧制の都立高校は、よい散歩の場所で、ここは全国の秀才が集まってくる一高につぐ優秀な高等学校であることを、父はよく話してくれました。 きたない灰色の、どこか淋しげで、そのくせ内に底知れぬ威厳と神秘さを秘めているような建物を、私は羨望と好奇の目で眺めたものでした。 私立の女学校に嫌気がさしていた私は、新制へのきりかえにチャンスとばかり、少数を募集した都立高校を受験しました。 男女共学をたてまえとした新学制は、私に憧れの校舎での勉学の道を与えてくれました。昭和二十四年四月、胸を躍らせて高校入学−といいたいところですが、女子十名余あとは旧制尋常科のむくつけき男の子が百十数名・・・とあっては、心臓の強いといわれている私でも心細さと恐ろしさで一杯でした。 同じ学年の男子生徒は、旧制尋常科の最後の人たちで、みんな一癖も二癖もある誇り高き?連中でした。少数の女の子だから、モテモテのスタイルなんて考える人がいたら、認識不足も甚だしいという状態でした。 男子高だったせいで、女子の為の設備は不十分で、なんとなく身の置きどころがなかった記憶が残っています。

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