「自由と自治」の校風を基盤にして

教頭 阿部 開造    

 時の流れは、自然、人、社会を変えていく。しかし、理想を追求する精神は、人の活動に活力を与え、時の流れと共に人から人へ継承されていく。

 本校の前身、府立高等学校は、昭和四年一月、府立の唯一の旧制高等学校として府立第一中学校内に呱々の声を上げた。 初代川田正澂校長は、高邁な理想を求め、英国の「イートン校」の紳士の教育を開始した。 進んで昭和七年、麗峰富士を眺望し得る「八雲が丘」に新校舎が建設され、英知と覇気をもって、学問を愛し、自由闊達な活動が展開され、府立高校の校風の基盤が据えられた。

 戦後の教育改革により、府立高校は廃校となり、都立大学の発足と共に、わが都立大学附属高等学校が新たに出発を始めたのである。 附属高校の初代森脇大五郎校長は、府立高校の良き校風を残すことを最大の願いとした。 その後、学校制度の導入、学園紛争の発生等、本校は様々な困難な局面に遭遇しつつ、校風「自由と自治」の精神を継承してきた。 これは、自己中心的な自由放縦を容認することなく、自他の人格を尊重し、相互に責任と信頼に立脚する厳しい精神のあり方を求めるものである。 緑多い自然環境と、大学と同居する教育環境に支えられ、この校風を基本に今日まで教育活動が進められてきた。 「自由と自治」の精神に培われて、既に八九二〇名の卒業生が附属高校を巣立っていった。

 本年、ここ創立六十周年を迎えるに辺り、私たちは過ぎし足跡を書き留めることを志した。 時に、都立大学は発展置を八王子市柚子に求め、昭和六十六年四月の移転を目指して準備を進めている。 本校は、ここ「八雲が丘」にとどまり、再び当たらな出発を始めようとしている。 伝統に安住することなく、将来に目を向け、先達の努力で築かれた校風を基盤に、個性ある学校の形成をめざして前進していきたいと願っている。 本記念誌が過去及び現在の本校の姿を表わすと共に、今後の飛躍を願って前進する里程標としたい。

 最後に、本記念誌作成に際して、先輩諸賢より、執筆の労苦、励まし、協力を賜ったことを深く感謝する次第である。

     
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