東京都立大学附属高等学校同窓会

六十周年記念誌の発刊にあたって

　いずれの国でもその社会が第一次産業依存からの脱皮に向けて走るとき、中等教育・高等教育への進学希望者が激増してその対応をはるときであり、一方、社会からの要求として、これら教育課程を習得した者が広範な分野で求められてくる時代でもあります。

　わが国においては、まさにそのような最初の時期が大正期の中頃に始まったものといえましょう。 大正七年、新たに施行された高等学校令は、官立のほかに、公立・私立の高校開設を認め、その組織を尋常科四年・高等科三年、合わせて七年制の編成が可能となったことであります。 また高等科への入学資格を中学四年修了として、学校教育の修学年限の短縮も考慮されております。 これ以降、旧制高校は七年制を原則とする高等普通教育機関となり、新たな高校増設期に入って行ったのであります。

　私立高校として大正末期に設立された武蔵・甲南・成蹊・成城の各高校、また公立高校としてほぼ同時期に設立された富山・浪速の各学校の後を継いで、昭和四年、本校の前身たる府立高等学校が設置されました。 その後は、寮歌「北帰行」をもつ旅順高校が昭和十五年に設立されたのみであります。

　昭和六十三年度を経れば、本校は開設以来六十年の齢を重ねることとなり、二つの世代を経過するに至ったことになります。 その間、敗戦による教育制度の大幅な改変・各種制度の改変と民主制の定着・あるいはまた学園紛争や進学競争の激化など、激動期の歴史からみて予期し得るもの、あるいは予期せざるものなど様々な事象が生じたことで、生徒諸先輩の足跡を辿り、適切な時期に、貴重な体験や業績についてとりまとめることは、きわめて意義深いものがあるといえましょう。 かかる観点から六十周年の記念誌を編纂し、本校の今後の発展のために大いなる糧にいたしたいと考えております。

　ここ六十年の歴史を導いてこられた先輩の方々に深く敬意を表しますとともに、本誌発刊に際してご協力いただいた関係各位に厚く感謝申しあげる次第です。