現役のファイヤーはどういうものか知りません。
でも、きっと男女で手をとって踊っているでしょう。
そうであることを期待します。
ぼくの一年生のときまではそうではなかった。
ぼくが都高に入ったのは、一九五二年のことです。
最上級は、旧制として入学し、女子は急遽、高校になって、少人数を募集しました。
ぼくのときでも男子と女子五〇の小じんまりした学年でした。
さて、ぼくの二年のときです。
記念祭の執行委員長になりました。
いろいろ改革に心をくばりましたが、最大の問題はファイヤーでした。
それまで、キャンプファイヤーは、いわば男子の特権として、高下駄にマントで放歌高吟するものでした。
それはそれでなかなかいい。
でもそれだけでは、全校三分の一弱の女子はポカンと見ているだけではありませんか。
前の年も、男女でペアーをつくろうとしたけれど「手を取って」といったら、スクラムのように肩を組んだ、という(笑)話があるときでした。
それで、いろいろ討議して、寮歌や応援歌の間に、何曲かにかぎって、フォークダンスをしよう、ということになりました。
早速、昼休みにフォークの練習をしました。
その後、全学連で活躍する女性の運動家Hさんと、フォークダンスを練習している写真があります。
本番は、あまり盛り上がりませんでした。
男女ともに、慣れず、面白くなかった。
でも、ぼくには、やがてファイヤーにも女子がくわわる、という予感はありました。
いま考えると、これはファイヤーへの女性参加というより、当時やっていた「うたごえ」運動の産物という気がしないでもありません。
いまの都立のキャンプファイヤーがどういうものか知りません。
存外、昔に戻っているかもしれない。
途中でできない時もあったとききます。
ファイヤーは時代によって変わっていい。
でも、もし、今男子と女子で楽しく青春を満悦しているとしたら、とまどいがちに手をさしのべあった先輩たちがいたことを、たまに思い出してほしいものです。