茶道部

後藤啓子 教員(平成6年〜平成18年)    

 季節の花や軸を飾った茶室に座り、その場が終われば消えてしまう芸術空間を共同で創ることの緊張を伴う心地よさ。 自分を引き付け、支えてくれた茶道を生徒にもなんとかして教えたいと思い続けていたある日、茶道を習いたい生徒とその生徒のために茶道部を創りたいという先生がいらっしゃることを知った。 平成七年(一九九五)年頃だったと思う。 無理にお願いするような形で、茶道同好会を立ち上げた。

 和室が無く、大岡山住区センターの和室を借りて活動を始めた。 授業が終わり三時半過ぎに大荷物を抱えて集まる生徒や私を見て、センターの方が道具を置かせてくれたり時間延長にそっと目をつぶってくれたりと、ずいぶん気遣ってくださった。 校内に和室ができて生徒とお別れのご挨拶に伺ったときには「寂しくなるね」と言って見送ってくれた。

 校舎改築中の仮設校舎の時代も通して、文化祭には普通教室に立札の茶室をしつらえた。 不自由な道具でミニ茶事を行ったり、日帰りで京都の家元のお茶室見学に出かけたり、おかげさまで楽しい活動ができた。

 中等教育学校開校に向けた校舎改築にあたり、念願の和室を作ってもらえることになった。 茶道ができて、しかも茶道以外にも使えるよう和室の構造を考えた。 床の位置や畳の敷き方や炉の位置など希望通りにしていただけて嬉しかった。 が、それでも実際には使いづらいところがあり、小さな後悔もある。

 和室ができた翌年の三月には食物室を借りて準備して、三年生のお別れの茶事を催し、私も一三年過ごした都立大附属高校から異動することになった。 皮肉にも和室ができると入部希望者がいなくなってしまう。 三年生卒業後、一人になった部員を引き受けてくださった藤井かね子先生には感謝に堪えない。

 茶道部立ち上げのきっかけを作ってくださった平山澄子先生、外部指導員として茶道教授を引き受けてくださった堀越真子先生と佐藤鶴子先生にも心からお礼申し上げたい。

(閉校記念誌(2011年3月発行)からの転載)   

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