アウトロー

26期 うじきつよし(氏木 毅)    
うじき
   うじきつよし

 えっ? オレなの? 通学はしてたけど、三年間、ぜんぜん学んでない!特に後半は学校にいるより、近くの喫茶『アイリス』とか雀荘にシケ込んでた方が長いかも。

 ね、もう書き出しからぜんぜんダメでしょ?

 入学したのは1973年。当時は学校郡制度で、行き先は勝手に振分けられ選べない。目黒、広尾、都立大付属の中で「なんか名前が一番カッコいいじゃん」と、ロクな予備知識もなくノコノコやって来た入学式。

 柿の木坂を登って大学の門から入るや否や、まず目に飛び込んだのは至る所に乱立する、ペンキで荒々しく書き殴られた、やたらカクカクした漢字だらけの看板群。『造反有理』ってなんだっけ?おおっ、これが所謂『タテカン』ってヤツか!こりゃまるで、ニュースで見たあの『安田講堂』の世界!事の詳細は分からずとも、小5ながらシンパシーを感じていた1969年の衝撃が甦る。

 「すげぇぞ、ココは!」ちょっとビビリつつ大学キャンパスを進むと、どうも高校のエリアに入ったらしく、式典を待つ新入生たちがポツポツ見えてきた。その間を、ヘルメットにサングラス、タオルで顔隠した先輩(多分)がすり抜けて行く。半ベソで親にすがりつく女子は「なんで広尾、目黒じゃなかったの!」と訴えていたんだろう。

 大学と共通の講堂で行われた入学式は、先輩たちのヤジが飛び交い、終いに壇上の校長にトイレットペーパーが飛び交い、式辞もそこそこ、校長はそそくさと退場した。

 ピークは過ぎたとはいえ学園紛争の爪痕が残る『自由と自治』のキャンパス。「新入生諸君!オリエンテーションを始めます!」えっ?今、授業中なんだけど。突然登場した先輩が、授業を中断、『主体的自治の危機』を滔々と熱弁する。

 かたや軟派な先輩たちは、『ポパイ』『MCシスター』ばりのIVルックでキメて登校してくる。ロン毛ロンドンブーツのグラムロッカーまでいる!

 昼休み、どこからか響いてくるエレキギターの音に引き寄せられていくと、グラウンド横に張り付いた、ちっこい円形の『自治会館』にたどり着いた。まだエレキは不良の時代。放射線状にぐるりと、小汚い部活の部室が並んでいる。エレキは『新聞部』の扉の中で鳴っていた。恐る恐る覗くと、「おう、入れよ」とロン毛強面なわりには、やけにフランクな声の主が迎え入れてくれた。埃まみれのドラムやアンプ、ガリ版刷り機、床に転がったヘルメット、書きかけのタテカン、壁に『ジャズ研』の殴り書き。さすが授業中はまずいが、それ以外は音出し問題ナシ。最初はおっかなびっくり、程なくして入り浸るようになる。

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